建学の精神

立正佼成会は、在家の仏教教団であります。仏の教えを日々の生活に活かし、人も我も共に仏道を成ぜんとして努力しているのであります。しかし、仏教というものは、その説くところ、教えるところ真に広大にして、深遠であります。釈尊が生涯にわたって説き示され、更には仏道の先覚者たちが血みどろの努力を重ねて今日に伝えられた仏教は、簡単な気持ちで学べるものではありません。事実、日蓮聖人は、幼少の時より虚空蔵菩薩に向かい「日本第一の智者となし給え」と祈願を立て、自ら法門に心血を注いで取り組まれております。私は、その心意気を学林の皆さんに望みたいと思います。偉大な法門を学ぶためには、現在の大学を卒業するだけでは十分ではありません。その意味から大学院のような性格をもった学林を設置し、大学を卒業した熱心な信仰者を採用し、政治・経済・法律・社会学など専門分野の大学院で、より学問を究めることをする一方、一定の期間寝食を共にして徹底的な仏法の研修と修行をさせ、専門の知識を究めてもらいたいというわけであります。

私は、世界平和実現のためには、わが教団、わが宗教などという狭い枠の中でうごめいているのではなく、お互いが理解し合い、手を取り合って、人類全体の幸福のために力を結集しなければならないとの確信を得ました。

学林に籍をおく皆さん方が広く宗教その他の専門分野を学ばれ、実践的仏教と宗教協力の推進はもとより、社会、世界のあらゆる面で役立つ人物に育ってもらいたい―かかる願いが、学林創設の意義の根底に流れているわけであります。言うなれば、本会のみならず、国家、世界の中核たるべき法の器、人材を育成するという希望と期待が、皆さんに向けられていることを自覚して頂きたいと思うのであります。

この自覚こそが発菩提心であり、それをしっかりとふまえて行学二道に研鑽されてこそ、その期待によく応えることができるのであります。人格、識見ともにすぐれた学林生と言われるためには、教えられるすべてのことを、あくまでも自己の問題として受け止め、そして求めていくという努力こそが、教えと自分自身を活かしもし、殺しもするのであります。

ぜひ、未来を担う青年の皆さんがもっともっと視野を広くし、スケールの大きな理想をもって、菩薩道の先駆者として、身、口、意三面において文句なしに大衆をリードしていける実力を身につけることを願います。青年諸君の奮起を大いに期待しています。