第二回 国際エンゲージド仏教青年リーダーフォーラム開催
〜インクルーシブ社会をテーマにアジア9ヵ国の仏教青年が結集〜
2024年6月11日、学林と国際エンゲージド仏教徒ネットワーク(International Network of Engaged Buddhists―I N E B)は、「第二回国際エンゲージド仏教青年リーダーフォーラム」をオンラインにて開催しました。
昨年に続いて2回目の開催となる本フォーラムは、「エンゲージド仏教とインクルーシブ(包摂)社会」をテーマに、現代的諸課題に対する仏教の応答を形成するために、日本、タイ、インド、スリランカ、ヴェトナム、ミャンマー、インドネシア、シンガポール、バングラデシュの9カ国の仏教青年リーダー約50名が参加しました。
開会式ではINEBのソンブーン・チュンプリー事務局長(以下、ムー事務局長)と学林学長の杉野恭一師が登壇。ムー事務局長は、日本の仏教徒であり科学者でもある中村尚氏の言葉を引用し、西洋の近代化の影響を受け、今後ますます多様性と複雑性を帯びるアジアにおいて、若者が国や文化やコミュニティの違いを超えて、対話を通して相互理解を深め、調和や非暴力の関係を創造していく重要性について言及しました。杉野学長は、現代的諸課題に対して、仏教聖典や教義などの宗教言語と、専門的知見や分析といった公共言語の両方を駆使して、紛争解決、経済・社会開発、環境持続可能性などの現代の課題に取り組むための智慧と革新的なアプローチを見出すことの重要性を強調しました。
「仏教と多元主義」のセッションにおいては、大乗仏教、上座部仏教、チベット仏教の視点から、「仏教と包摂社会」に関して、立正佼成会の根本昌廣参務、Anchalee Kurutach氏(タイ)、Prashant Varma(インド)氏が発題。根本師は、すべての存在が平等に悟りを開く可能性があるとの大乗仏教の特徴に言及した上で、暴力が蔓延し、命の平等な尊厳性が失われ、命が差別化される排他的現代社会を包摂社会に変容していくために、慈悲や慈愛という宗教的価値観をもって社会で実践していくことが仏教徒に求められていると述べました。
「ケースプレゼンテーション」のセッションでは、「難民と移民の受入」において、INEBの青年コーディネーターも務めるミャンマーのスー・ティケ・サン氏が、クーデター後の国内の不安定な政治、悪化している経済状況について概説。難民受入における医療、仕事、教育などの分野での課題に言及しつつ、仏教のカルナ(慈悲)とメッタ(慈愛)の教えに基づいて、難民を受け入れる門戸を開く重要性に言及。タイのプラパポーン・ピヤパットウォラサクン氏は、ミャンマーからの難民移民の現状と人道支援の取り組み、さらに政策提言についてドキュメンタリー映像を用いて説明しました。
「民族的、宗教的多様社会における紛争の変容」のセッションでは、インドのラーキンダル・ソーレン氏がヒンズー教とその他の宗教コミュニティ間の緊張関係に言及しつつ、国家主義的傾向に宗教が悪用される危険性を回避するためには、諸宗教対話・協力の重要性を強調しました。
最後に「環境保護に対する包括的なアプローチ」のセッションでは、シンガポールの環境活動家であるラヴァーニャ・プラカーシュ氏が、参加型開発の視点でのジェンダーの公正、森林管理、社会から疎外されている人々への傾聴活動を紹介。「非暴力と知足」など仏教的かつ環境中心の価値観に根ざした新しい経済および政治システムの構築の必要性を主張しました。ヴェトナムのグエン・ハイ・ウー氏は、自身が継続しているゼロ・ウェイスト(廃棄ゼロ)、ミニマリズムの生活を紹介しつつ、エンゲージド仏教青年としての実践を説明しました。
3つのセッション終了後には、学林生とINEBの青年によるセッションテーマ別のグループディスカッションが行われました。学林生は、日本における難民受入や在留資格発行の現状、立正佼成会やWCRPによる諸宗教対話・協力の取り組み、豊かな環境資源を生かした国際的修練道場である学林青梅キャンパスでの「青梅モデル」(※①自然との対話、②全体的・統合的な人間開発、③地域コミュニティとの交流、④持続可能で循環型の経済・生き方という4つの統合要素を強調したモデル)を紹介しながら、アジアの仏教青年リーダーと対話し、相互理解と友情を深めました。
フォーラムの結びとして、ムー事務局長は、将来に向けての協力を地球変革に繋げていくためには、Understanding(理解)、Solidarity(連帯)、 Action(行動)が必要と強調。杉野学長は、「我々の直面する課題は、複雑で、時に悲しみと無力さに押しつぶされそうになる。しかし、我々には仏教の智慧があり、創造的な応答がある。我々には、個の信仰的覚醒が、社会、世界の変革創造につながっていることを知るエンゲージド仏教のサンガがある。一緒に新しい世界を創造していきましょう。」と呼びかけました。