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2024.05.01

学林創設60周年記念式典ならびに学林合同入林式 〜実践的仏教と諸宗教対話・協力のための グローバルトレーニングセンターとしての機能を強化〜

 

2024年4月6日(土)、立正佼成会大聖堂で学林創設60周年記念式典ならびに学林合同入林式が開催された。立正佼成会会長・初代学林学長庭野日鑛師臨席のもと、約3000名(会場参加者800名、オンライン参加者2200名)が参加した。60周年の節目を迎え、法華経に基づく全人教育を行う実践的仏教と諸宗教対話・協力のための国際的な修練道場として、世界の未来を創る青年、菩薩道の先駆者を育成していくことを誓った。

来賓を代表して、ニューヨークから来日したウィリアム・ベンドレイ世界宗教者平和会議(WCRP)国際名誉事務総長が祝辞を述べ、学林講師を勤める明石康元国連事務次長、島薗進東京大学名誉教授、竹村牧男前東洋大学学長、西原廉太立教大学総長らが列席した。東京佼成ウインドオーケストラの演奏に乗せて、学林大樹・光澍・芳澍・蓮澍各科の新入林生が入場し、誓いの言葉を述べた。

式典では、杉野恭一第5代学林学長により、「学林ビジョン」が発表され、仏教セミナリーとして、実践的仏教指導者育成をその中核的使命としつつ、「グローバル」・「諸宗教」・「多世代」に開かれた学林を目ざすと宣言した。すでにキリスト教徒の学林生を迎え、様々なプログラムを通して「諸宗教に開かれた学林」が顕現している。また、「多世代共創の学林」を志向し、学林大樹の年齢上限の引き上げ、全国の会員、非会員に対し、短期、中期の学林における体験学習に門戸を開き、多世代が共生、共創できるコミュニティを構築すると述べた。さらに、「庭野日敬スクール・フォー・グローバルリーダーシップ」を設立し、全世界、諸宗教、会員、非会員を問わず、学林創設者庭野日敬開祖の精神に基づき、実践的仏教、諸宗教対話・協力、世界の諸分野で国際協力を推進するリーダーを養成すると宣言した。

学林における「実践的仏教」の学びは、タイに本部を置く「国際仏教徒ネットワーク(I N E B)」と学林とのパートナーシップにより、学林生が世界の仏教青年と共に、紛争、貧困、環境問題など人類共通の課題に取り組んでいる。「諸宗教対話・協力」の実践では、国内におけるマザーテレサホームと学林生による困窮者に対する諸宗教協力を通した炊き出し活動などに加え、キリスト教、イスラーム、ヒンズー教など世界の宗教指導者による講義・対話が行われている。

創設60周年テーマ『未来から吹く風を感じ、「Tradition(伝統)」を「Tradition-ing (変革創造する)」のもと、立正佼成会学林は「法華経に基づく全人教育を行う実践的仏教と諸宗教対話・協力のための国際的な修練道場」として、世界を創造する「菩薩道の先駆者」を育成する誓いを深めた。

ウィリアム・ベンドレイWCRP国際名誉事務総長の祝辞では、「私たちは、菩薩のものの見方を身に付けることから始めなければならない。現代的な問題の根底に、いかに人間の本質への無視が横たわっているかを理解する必要がある」と訴えた。また、新入林生たちは自ら「菩薩として歩む道」を選択したが、「その選択の背後では、久遠の本仏が皆さまをお選びになったのです」とエールを送った。

初代学長を務めた立正佼成会会長庭野日鑛師の法話では、当時の思い出を振り返りつつ、学林生と大菩薩嶺を登山した思い出等を語った。さらに、石井勲著『親こそ最良の教師』の一節を読み上げ、子供に対する父母の存在の大きさを説明した。最後に「人類が戦争することなく、世界が宗教に基づいて平和になるよう願って、これからも皆さんと精進していきたい」と語りかけた。(中外日報・仏教タイムスなどの記事を参照)

 

第二部 パネルディスカッション「学林創設のビジョンと世界を変革し未来を創造するリーダー像」

第二部では、『学林創設のビジョンと世界を変革し未来を創造するリーダー像』と題してパネルディスカッションが行われた。パネリストとして登壇したのは、WCRP/RfP国際名誉事務総長のベンドレイ博士、千葉大学大学院社会科学研究院長で学林講師の小林正弥氏、杉野恭一学林学長、大樹59期生の池田委世さんの4人。光澍(予科)12期卒の和田惠久巳総務部長がコーディネーターを務めた。

ベンドレイ博士は、人間はあらゆるものと関係し合う存在であり、そうした認識を持つことがリーダーとして重要であると伝えた。また小林氏は、若い世代が非常に純粋な志を持ち、誠実に真剣に世界の問題に挑戦しようとしている姿に感銘を受けたと吐露。世界の人を幸福にしたいという実践的な問題意識を持つ人々が共に学び合う学林の精神に共感を示した。

次いで、杉野学長はWCRP/RfP国際副事務総長時代、ベンドレイ博士から多くの学びがあったと述懐。その一つとして、「これからの宗教者は第一言語と第二言語を持って、それを巧みに行ったり来たりしなければいけない」と教わったことを紹介した。第一言語とは宗教者としての言葉で、第二言語とは公共の言葉であると説明し、両方の言葉を理解した上で社会の問題を見据え、世界の課題に挑戦していくのが学林の使命であると述べた。

「宗教の持つ可能性」に関する、会場からの質問に対し、学林大樹生池田さんは、学林の掲げる「実践的仏教」に言及し、「自己の覚醒・社会の変革・世界の変革」の三つを同時に行うところが特長であり、宗教には世界を変革する可能性があると述べた。この池田さんの発言を杉野学長が補足。「真の仏教とは自己の目覚めも世界との関わりも全て融合、調和されている世界です。そのような信仰を持つわれわれが社会に関わっていくということが最も大きな可能性だと考えます」と強調した。

ベンドレイ博士は、自分の信じる信仰を謙虚に誠実に生きることが重要であり、その信じる心を通して世界の美しさや自分の人生を愛する、それは「菩薩行とも呼べる」と明示。世界を変えるのは、このような「創造的なマイノリティー」であると述べた。次いで小林氏は、自身が研究する「ポジティブ心理学」では感謝や利他的な行動が人々の幸福感=ウェルビーイングを高めるといわれているが、それは宗教が持つ道徳的倫理観の核心部分が科学的にも証明されたということであると主張。現代は「宗教と学問が再び接近し始めた時代」であり、ベンドレイ博士が述べた「創造的なマイノリティー」とは、「皆さんのように宗教性や精神性を理解し、かつ、学問を修め、それが知になるということを宗教と公共の両方の言語で伝えられる、そうした可能性を持つ人だと思う」と語った。

最後に手を挙げたのは、光澍大学科49期生の男性(19)。男性は自身がキリスト教徒として学林に入林したと紹介。本会の活動を1年間学ぶ中で、調和をもって平和を見いだしていく、そして実践をもって平和を具現化していくという姿勢を学んだと報告した上で、「大学で和解学を学んでいるが、宗教者にとっての和解とは何か、教えてほしい」と投げかけた。

これに対し、30年以上にわたり世界の紛争和解に携わってきたベンドレイ博士が回答。宗教者としての和解には多くの方法があると伝えた上で、片方の椅子にはイスラームの指導者が座り、もう片方には仏教の僧侶が座る、そのような難しい対話の状況に身を置く中で、真に自分の宗教を生きている人を目の当たりにしてきたと述懐。「優しいまなざしや声かけ、気配りといった自分自身の信仰からくる慈悲が相手の慈悲を見いだす。そのような聖なる深層(信仰)を介してお互いに分かり合える。そう私は信じている」と語りかけた。(佼成新聞デジタルより)

 

その後、大聖堂6階特別応接室にて、以下の先生方から感想や学林教育に対する提言がなされた。

ウィリアム・ベンドレイ博士 (WCRP国際名誉事務総長)

明石康先生 (元国連事務次長)

竹村牧男先生 (前東洋大学学長)

島薗進先生 (東京大学名誉教授)

小池俊雄先生 (東京大学名誉教授)

齋藤忠夫先生 (東北大学名誉教授)

小林正弥先生 (千葉大学教授)

西原廉太先生 (立教大学総長)

佐藤信行先生(中央大学副学長)

内山義英先生(青山学院大学教授)

松井ケティ先生 (清泉女子大学教授)

添田佳伸先生 (宮崎大学教授)

  尾﨑元先生(共同通信社「メディア戦略情報」編集長)

濱崎光仙先生(大日本茶道会本部教授)

 

松井ケティ先生(清泉女子大学教授)

本日の式典を通して、未来が明るいと感じました。教育というものは、その人が持っている可能性を引き出す役割だと私は思っております。学林ではワークショップ形式の授業を行っていますが、今日のパネリストである池田さんは、私たちの清泉女子大学地球市民学科を卒業し、学林に入林しました。彼女が行動力のある宗教者として立派に成長した姿を見て、とても感動しました。

竹村牧男先生(前東洋大学学長)

本日の入林式は非常にスピリチュアルな雰囲気で行われ、感動しました。特に、入林された方々が自らの誓願を大きな声で発表された場面が印象的で、非常に頼もしく感じました。学林が実践的仏教と諸宗教間の対話を推進するリーダーを育成する場だということが強調され、その建学の理念に深く感銘を受けました。是非これを根本に据えて、それぞれの学林生をできるだけその理念に近づくように育てていきたい、育てていっていただきたいと思いました。

 

濱崎光仙先生(大日本茶道学会教授)

学林に伺うのはいつも楽しみです。茶道の授業の根底には禅の精神やおもてなし、すなわち相手のことを思って何かをさせていただく心があります。心が癒されるお茶の時間を過ごしながら、感受性や心を宗教を通して育てていらっしゃるのを感じます。

齋藤忠夫先生(東北大学名誉教授)

学林には全人的な教育と素晴らしいネットワークがあります。現在、世界各地で紛争が起きていますが、WCRP(世界宗教者平和会議)が設立された背景には、第一次、第二次世界大戦で宗教者が紛争を防げなかったという悔いがあると聞いております。今後も学林が、そういった問題を解決できる人材を輩出してくれることを期待しています。

 

 

  添田佳伸先生(宮崎大学教授)

本日、学林が開かれた場であることを再確認しました。異なる専門分野が実はすべて繋がっているということを改めて感じました。様々な分野との出会いは、学林生にとって重要な経験になると思います。

佐藤信行先生(中央大学副学長)

現代社会では、世俗的な倫理や道徳だけでは答えが出ないという議論が強まっています。法律の今までの議論の枠組みでは結論が出せないので、まさしく倫理的、道徳的な、あるいは宗教的な価値観を基礎としないと決着がつかない。世俗法の分野では、宗教の力を借りないと今後の発展が難しいという時代に突入していると感じています。そうした意味で、学林生との対話は、私にとっても大変勉強になっております。

 
 

 

尾﨑元先生(共同通信社「メディア戦略情報」編集長)

コミュニケーションをテーマに講義をさせていただいています。現代のコミュニケーションの特色として、ニュースとか世の中の動きをみるときは、文字よりも動画で説明したものが増えています。また、ウクライナ紛争、ガザ、パンデミック、気候変動など、テーマが大きすぎて、自分では対処できないことから「ニュース忌避」という現象が、世代を問わず、世界的に起きています。そうなると、本当に観たいものしか見ないという傾向に陥ります。こうして、ニュースメディアの世界が大きく揺れている中、いかにして人々の意思疎通や情報、思想の共有を図るかについて学林生たちと考えています。彼らからも多くのことを学ばせてもらっています。

西原廉太先生(立教大学総長)

私は聖公会の主教も務めております。聖書の「地の塩、世の光」という言葉の意味を再確認し、クリエイティブなマイノリティとして社会にどう貢献できるかを考える必要があると感じました。また、私が大学の総長としていつも意識していることについて改めて確認することができました。今年の入学式の訓辞では、ほぼ宗教を持っていないと思われる学生たち5,000人に一切キリスト教のキの字も、聖書のことも使わずにキリスト教の精神や価値を伝える。それは、プライマリーランゲージではなく、セカンダリーランゲージでいかに伝えられるかが私の総長としての勝負どころです。まさにそこで私自身が鍛えられているんです。そういう意味で今日のベンドレイ先生のお話に励まされました。

 
  小池俊雄先生(東京大学名誉教授)

私の専門である水の研究は、気候変動や災害、貧困、健康、ジェンダー、平和と密接に関連しています。そうした複雑な問題を解決するためには、伝統的な知識や科学を統合し、科学的な知見を人々の行動に結び付けられる触媒的な存在、すなわちファシリテーターが必要です。カッティングエッジのサイエンスから、ローカルな行動までを繋ぐことが大事です。今まで学術は、そうした触媒的存在を十分育ててこなかったのではないでしょうか。学林では、ファシリテーターとしての役割を担う人材の育成が重要だと感じています。さらに、アルムナイ(卒林生)ネットワーク活性化のための活動も強化することが大切であると思います。

内山義英先生(青山学院大学教授)

学林で育った自分にとって、ここは非常に大事な場所です。今日の式典に参加して、改めてそのことを実感しました。現在この役割を担っているのも、学林で講師を務められていた中央大学教授眞田芳憲先生から「私の後を継ぎなさい」と言われたことがきっかけです。私が専門とする経済学と仏経的理念の会通など、プライマリーランゲージとセカンダリーランゲージを考察できる研究者でありたいと思います。まだまだ眞田先生には及びませんが、少しでも学林の教育に貢献できるように、これからも努力していきます。

 

 

 

 
小林正弥先生(千葉大学大学院教授)

プライマリーランゲージとセカンダリーランゲージについて、私は学林で教え始めてから佼成会の教えや思想を学びましたが、その視点からすると、特に学林のような場でより重要な意味を持つようになると感じます。例えば、ウクライナやガザの紛争、旧統一教会問題といった深刻な時事問題を講義で扱う中で、仏教の教えが生きてくると感じます。また宗教と科学の関係が接近していることも重要で、学林がそれを先駆的に行っていることが大いに価値があると思います。今後プライマリーランゲージとセカンダリーランゲージを用いた再定義が重要になるのではないでしょうか。特に、現代日本の政治が戦前に戻りつつあると感じる中で、開祖の教えをもう一度再評価し、現代に合わせた再定義を行うことが大切だと思っています。

 

島薗進先生(東京大学名誉教授)

近代日本宗教史でいう在家主義からみると、「万人司祭主義」というより「万人当事者主義」の視点が重要であると思います。何か課題を抱えている、痛みや辛さの当事者が相互カウンセリングや法座を行なったり、万人当事者の時代というのは、全ての人が自分なりに自分の痛みを人に解るように話し、そこに共感が現れてくるという社会のあり方を求め、立正佼成会は、法座からそのような新たな展開を目指していると思います。今日、私が感動したのは学林生の誓いの言葉です。菩薩の誓願、すなわち苦しんでいるすべての命を救うという誓いを聞いて、とても感銘を受けました。この菩薩の誓願、在家主義の観点から、今後、立正佼成会や日本の近現代仏教史を紐解いていきたいと考えています。

 

 
   

明石康先生(元国連事務次長)

今日の議論が世界的な視野まで進んだのは、ここにいる方々がそれぞれユニークな存在であり、リーダーシップを発揮してきたからです。特に、ウィリアム・ベンドレイさんと杉野さんがニューヨークでWCRP(世界宗教者平和会議)のリーダーとして、様々な国や宗教に容易にアクセスできたことが大きかったと思います。杉野さんが私のスリランカでの和平活動にも協力してくれたことを感謝しています。こうしたことは、日本という比較的世界から隔絶されてきた存在としては非常に稀なことであったし、これからの日本がもう少し世界に開けた存在であろうとするならば、まさに立正佼成会が先鞭をつけた平和への取り組みを継続することが求められていると思います。

 

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学林は、立正佼成会庭野日敬開祖により創設された、
法華経に基づく全人教育を行う、実践的仏教教育機関である。
The Gakurin Seminary is a global training center for engaged Buddhism and interfaith action.
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